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Vol. 036 三面川暮色

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  月に一回、飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の13曲目です! “ 作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作詞家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかその自分が気に入っている歌だけを集めた盤を世に出したいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 ” 三面川暮色 歌:三山ひろし 作曲:弦哲也  2013年 / 日本クラウン 俺は「風景が思い浮かぶ歌」を心がけて作ることが多い。その風景を描くときに必ず色彩というものが入ってくると思っているんで、これまで色使いにはこだわって歌づくりをしてきたつもり。それでまぁ今回の『三面川暮色』は「夕景」を舞台背景に作った歌なんだけど、夕方というと普通はだいたい茜色とかで表現すると思うんだけど、もう一歩踏み込んで、日が暮れていく時に刻々と色が変化していく様 ( さま ) を書いた。そして、その変化を空ではなく川に映る夕景を描いた作品なんだよね。 それを色でいうと、最初は赤い夕陽がだんだん落ちていって、夜になる手前に一瞬現れる色、紫紺を歌に入れたかった。三面川 ” 暮色 ” のタイトルにあるように暮れていく色を表現する、そういう所に着目して歌詞を書いている作家も少ないし、自分としては他にない歌が書けたと思って、今回ピックアップした。  作曲は弦哲也 * さんで、メロディーをワルツにしてもらったんだけど、この歌のテーマ「旅情」、そして「色使い」と「ワルツ」がピタッとハマったな、ということもこの歌を気に入っている理由の一つ。 ちなみに三面川って新潟にある川なんだけど、ここを選んだのはやっぱり夕陽が沈んでいくとなると日本の西側、日本海側に流れ出ていく川が良いなと思ったの。川の向こうに日本海があって、そこに夕陽が沈んでいくロケーションだよね。新潟は師匠の遠藤先生 * の出身県でなじみもあるし、実際に三面川 * にも行ってるんでピッタリだなと。 ( 新潟県には ) 信濃川もあるけど、この川を題材にした歌はいっぱいあるし、旅情歌なんであんまりメジャーなのよりは少しローカル色がある方が良いというのも選んだ理由だね。 今回はこれまで。いかがだったでしょうか?...

Vol. 35 蒲公英

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    月に一回、飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の12曲目です! “ 作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作詞家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかその自分が気に入っている歌だけを集めた盤を世に出したいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 ” 蒲公英  歌:水元亜紀 作曲:杉本眞人  2011年 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ この歌を作ることになったきっかけは万代宏 * くん。彼とはミノルフォン * からデビューした時以来の付き合いで、歌い手をやめてキム・ヨンジャさんのマネージャーになった時に「ヨンジャさんの歌を書いてみてくれませんか?」と言われた。   詞を書く前にまず思ったのは、キム・ヨンジャ * さんは韓国の人だから、日本で活動すると言葉や習慣の問題など色々苦労も多いだろうな、と。海外で活動するということに限らず、自分が生まれ育った場所から全然違う環境へ行って生活していく人って沢山いるし、そういう人たちへ向けたメッセージがある歌が良いかなと思って、この歌詞を書いた。  なぜ蒲公英をモチーフにしたかというと、タンポポっていうのは根っこが深くて、そこの土地に定着するとそこで結構丈夫に育つ植物だから。根をしっかり下ろして、そこで花を咲かせる、咲き終わって綿毛になると風に吹かれて、また色々な場所へ行き、そこでまた根を張って、育つ … という「たくましさ」をタンポポは持っている。それに例えて、人間も見知らぬ土地へ行っても、そこでしっかり生活基盤の根を下ろして、生活をして … という「力強さ」を歌にした。今は時代も変わったけど、昔は結婚して自分の知らない土地で暮らす女性が多かったしね。  結局この歌はヨンジャさんに歌ってもらうことにはならなかったんだけど、良い歌だしもったいないからということで水元亜紀さんが歌ってくれた。それはそれですごくありがたい事なんだけど、元々はヨンジャさんをイメージして書いた歌なんで、いつかこの作品の根底にある「遠く離れた土地で活動している」経験のある人にも歌ってほしいなという気持ちがあるんだよね。...

Vol. 34 街角

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  月に一回、飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の11曲目です! “ 作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作詞家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかその自分が気に入っている歌だけを集めた盤を世に出したいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 ” 街角 歌:呉小芸(ウー・ショウイン) 作曲:遠藤実  1989年 / CBS SONY 「街角」は俺にしては珍しく女性をテーマにした歌。歌い手は中国の上海出身の呉小芸(ウー・ ショ ウイン)さん。彼女はキレイだし良い子だったんだけど、大手プロダクションの所属でもなかった し、日本でヒット曲を出すことは難しかった。ただ良い歌なんでもう一度どこかで復活させたいなと思って、今回ピックアップした。 「すきま風* 」とか「夢追い酒 * 」を担当したソニーの名物ディレクター成瀬さんから声がかかって作られた歌。ソニーもまだCBSソニーっていう名前で勢いのあった時代。この歌は演歌・歌謡曲では 珍しくメロディーが先 * にあって、それに詞をつけるスタイルだった。作曲は遠藤(実)先生でワルツの曲。4分の3(拍子)に4行詞でやってほしいと言われた。4行詞ってのは歌謡曲の典型的な基 本パターンなんだけど、今ではほとんど耳にしないどころか、当時(1989年)でもすでにあまりやらない手法になっていた。 (遠藤)先生が作った哀愁のあるメロディーを聴いた時、季節感のある別れ歌にしようと思って(歌詞を)書いた。シャンソンに「枯葉*」という歌があるけど、それを彷彿させる歌というか、まぁ詞もメ ロディーも全然シャンソンと関係ないんだけど、季節の寂寥感や別れの寂しさをオーバーラップさ せて作った歌で、ちょっとおしゃれに仕上がったなと自分では気に入っているね。 今回はこれまで。いかがだったでしょうか? 第35回は『蒲公英(たんぽぽ) 』(水元亜紀)、1/15リリースです。お楽しみに! すきま風 歌:杉良太郎 作曲:遠藤実 編曲:京建輔 夢追い酒 歌:渥美二郎 作詞:星野栄一 編曲:只野通泰 メロディーが先 演歌・歌謡曲では通常「歌詞」が先に作られる 枯葉 シャンソンの代表的...

Vol. 33 とうさんの手紙

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  月に一回、飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の10曲目です!! “作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作詞家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかその自分が気に入っている歌だけを集めた盤を世に出したいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成” とうさんの手紙 歌:徳永ゆうき 作曲:ミヤギマモル  2015年 / ユニバーサルミュージック まずこの歌詞を作るきっかけは、元ユニバーサル(ミュージック)の山川ディレクターとのA面(夢さがしに行こう * )の打合せ中の雑談で「落ち込んだ時に何で気持ちを立て直すか」みたいな話になったんだよ。で、その時に山川さんが言うには「自分は父親からもらった手紙の中のたった一言で気持ちが吹っ切れたことがありました」っていうの。で、それは何?って聞くと、「人生は長いから」という一文ですって。それを聞いて「あぁ、”人生は長い”ってフレーズは歌になるなぁ」と思ったのが始まり。 若い時って時間が長く感じる。特に嫌な事はね。例えば子供の時の授業の時間ってすごく長い。俺は勉強嫌いだったから(笑)。それと同じで青春時代も楽しくやってる時は良いとして、やっぱり気持ちが落ち込んだり傷ついた時の時間ってすごく長く感じると思うんだよね。そんな時に父親から「人生は長いんだから、そんなに焦ったりしないで、のんびり構えていなさい」といった手紙をもらったら、沁みるだろうなぁと。それで「青春時代」と「人生は長い」をテーマに歌を書いた。 主人公がどういう状況にあるかをまずは(歌の)出だしで描きたいと思ったんで、都会で一人暮らしをしている古いアパートの郵便受けにある日突然父親から手紙が届いた、という書き出しにした。で、手紙を読む場所は普通部屋なんだけど、それだと周りの情景を描きにくいんで、その手紙を持って家の近くの公園へ持って行って、そこで読むっていうシチュエーションにした。そっちの方が、聴く人それぞれが季節感とか色々想像できるから。 この歌の作曲は何度も一緒に仕事をしているシンガーソングライターのミヤギマモル * さんで、ディレクターから少しテンポの早いワルツの曲で、というオーダーを受...

Vol. 32 一献歌

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    月に一回、 飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする「酒と話」。新シ リーズ『自分の中のヒット曲たち』の9曲目です!! "作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作者として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかはそういう自分が気に入っている歌だけを集めて、例えばLP盤など形にして、もう一度世に問いたいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 " 一献歌 歌:三山ひろし 作曲:四方章人  2021年 / 日本クラウン 今は音楽ストリーミングの時代だから若い人たちにはわかんないかもしれないけど、昔はレコードのシングル盤はA面とB面、CDはメイン曲(タイトル曲)とカップリング曲って言い方してた。メインのタイトル曲はレコード会社はじめ皆んなで力を入れてプロモーションするんだけど、カップリング曲はそれほど重要視されなくて時代の中に埋没してしまうことが多い。この話、最近毎回言ってる気がするけど(笑)。今回紹介する歌もB面曲。 メイン曲は制作者サイドの方針とか、歌手の持ち味や方向性とか、綿密な打ち合わせをして作品づくりするんだけど、カップリング曲はお任せスタイルの時も結構あって、この時も比較的自由に作家が作りたいものでOKということだった。 「一献歌」っていうタイトルのヒントはもう何十年も前の酒の席で。薬師寺の高田好胤師*が存命の頃、箱根の旅館で師を囲んで大勢で一杯やる機会があったの。酒席なもんだから「まぁ一杯」と酒を相手に勧める時に「まず一献」と。ワイワイガヤガヤあっちこっちで「まず一献」ってやってるんだよ。それを聞いてて、「あぁ、”まず一献”って言葉が面白いなぁ」と思って、いつか「一献」という言葉を使って歌を作ろうとずっと思っていた。今回のカップリングは自由にということだったんで、それを実現した感じ。 四方(章人)*さんが演歌演歌してない、現代的な今風なメロディーを付けてくれた。酒の席にピッタリの歌詞だし、おしゃれな曲だからカラオケで歌ってもかっこいいし、皆んなで楽しめる歌だと思ってる。三山くんもステージでギターの弾き語りで歌ってくれて、それもすごく良くて印象に残った。 さっきも言ったけどメイン曲は制作者サイドとか皆んなで方向性決めて作り...

Vol. 31 回転木馬(メリーゴーランド)

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  月に一回、 飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする「酒と話」。新シ リーズ『自分の中のヒット曲たち』の8曲目です!! "作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作者として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかはそういう自分が気に入っている歌だけを集めて、例えばLP盤など形にして、もう一度世に問いたいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 " 回転木馬(メリーゴーランド) 歌:氷川きよし 作曲: 永井龍雲  2012年 / 日本コロムビア  付き合いの長い外村ディレクターが当時(日本)コロムビアで氷川きよしさんの担当をしている時に、人生歌にチャレンジさせたいという依頼をもらった。前回*話したけどLPの1曲だから多少冒険もできるということもあって、杉さん*の「すきま風*」とか「明日の詩*」みたいな路線の歌を氷川さんの歌の幅を広げるためにも…というディレクターの意向があっての依頼だった。  人生には生きていく中で傷ついたり、ヘコんだりすることもあるけど、大きく見れば必ず良いこともある、まぁ循環というか。例えば、傷つき散った花も季節が巡ればまた咲くし、悲しい夜にまたたく星も朝になれば消える、とか自然と同じで人生には色んなことが順ぐりに回ってくるんだということを伝えたくて、回転木馬、メリーゴーランドに例えて書いた。杉さんの歌との比較で言えば、この歌の方が同じ人生歌でも少し若い感じに仕立てた。  これは推測だけど、俺が観に行った氷川さんのコンサート*で、この歌をBGMに使って自分の色々な過去の活動の映像をステージ上に映し出す演出をしてたし、氷川さんの中でも何か特別に感じる歌なんじゃないかと勝手に思ってるけどね。  前回のブログでは、時代を映す歌作りを心がけてるっていう話をしたけど、実はそれとは別に時代に左右されない普遍的な歌というのも大事。そういう意味では人生歌っていうのは流行り廃りがあまりない。自論だけど、どういう歌手であれ、1曲でも人生歌っていうのは自分のバイオグラフィーにあった方が良いんじゃないかと思う。歳をとっても歌えるから。だからこの歌が氷川さんにとってそういう1曲になってくれれば、という思いも込めて書いた。  活動も再開する...