Vol. 037 星の郷

 



月に一回、飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の14曲目です!

“ 作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作詞家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかその自分が気に入っている歌だけを集めた盤を世に出したいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 ”

星の郷 歌:大木綾子 作曲:都志見隆 2024年 / キングレコード

去年の9月に出た歌なんだけど大木綾子さんが歌っている「星の郷」が今一番気になっている。この歌を書いた時に久しぶりに良い歌が書けたなぁという手応えがあったんだよね。これまでも自分の故郷をテーマにした歌(イメージしたという意味では「北国の春」もそうなんだけど)をいくつか書いてきた。最近生まれ育った佐久(長野県)の星の美しさとかがすごく気になってるタイミングで、たまたま「星の郷」をテーマにという依頼が入ったというのも縁を感じてる。


この歌は日本だけではなくて、世界を相手にできる歌かなと思っているんだよ。例えば英語だったり、中国語だったりと色んな言語で歌ってもらいたい。やっぱりどこの国に行っても星の美しさを誇りにしている地域はたくさんあるんで、それを歌にして何とか世界に向けて発信したいなという思いで作った。実際友人に頼んで、すでに中国語に訳してもらってるんで、英語バージョンも作りたい。まだリリースしたばかりの新しい歌だから、自分としては今後の展開が楽しみだし、プロモートを自分でもやってみたいという気持ちもあって、今回このブログでピックアップした。作家は歌を作って製作者側に渡したら、あとはそこのプロモーションにお任せって感じなんで、当然俺もずっとそうやってきた。だけど、この歌に関しては作詞家の自分もちょっと積極的に動いて、例えば歌詞を色んな言語に訳して、星のキレイな国の歌い手さんたちに歌ってもらうとかも面白いかなと思ってる。自分としては作詞だけでなくプロモーションもやりたいと思った初めての歌なんだよね。


インターネット中心の時代になると自国ばっかりではなくて、色んな国で発信することも想定して歌づくりをしていく必要があると思うんだよね。今回、”星”という万国共通のテーマの歌を作ることで、そのモデルパターンの一つにしたいという狙いもあった。

この歌には環境保全に対するメッセージも入っている。冗談だけど、パリ協定から離脱宣言をしたトランプ(大統領)にも是非聴いてもらいたい(笑)。

やっぱりどこの国にも美しい星が見られる地域はたくさんあるし、それが失われていっている地域もたくさんある。「星の郷」では、多くの国で共有できるテーマと問題を題材にした訳なんだけど、そういった歌づくりがこれからの時代のスタンダードになっていくかもしれない。



今回はこれまで。いかがだったでしょうか?
第38回は『友情の星』(村木弾)、4/15リリースです。お楽しみに!


いではく プロフィール
作詞家。1941年、長野県南牧村生まれ。早稲田大学商学部卒。
主な作品:「北国の春」(千昌夫)/「すきま風」(杉良太郎)/「早春情歌」(小林旭)/「さっそく振込みありがとう」(順弘子)/「昭和流れ歌」(森進一)など。
JASRAC第16代会長(任期:2016〜2022年)

All Rights Reserved. Text & Images @ Godrillhas Production

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