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Vol.23 JASRAC会長(後編)

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  月に一回、いではくが飲み屋さんへ行って軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする「酒と話」。今回は三鷹にある宮崎料理のお店「車」で『JASRAC会長』について語ってもらいました! 前後編に分けてお送りします。 何かと悪いイメージのあるJASRAC。 音楽教室から著作権使用料の徴収*を開始した時の会長であったこともあり、世間から多くの注目が集まった。かつて週刊文春から「コワモテ会長」のタイトルで取材を受けたこともある、元JASRAC会長(任期:2016-2022)いではくに聞く"JASRAC会長"とは? 在任時にやったこと  まず会長になった時に個人的にいただいてたお中元、お歳暮など頂き物は全て断るようにした。というのも音楽っていうのは使われる範囲ってのはすごく広いんで、対外的なお付き合いで一作家としてもらっていた物も、会長になったらそれが意図してなくても何らかの形で利害に絡まないとも限らないから。そういう時にアレコレ言われたり、邪推されるのも嫌だったんで会長職を引き受けた時には儀礼的な物は一切お断りしたんだよね。  それから(JASRACの)全国の支部*巡りを始めた。これをするきっかけは、ある支部に行った時に現場で長年徴収業務をやってるベテラン職員が「自分たちは作家さんのために一所懸命徴収をしているんだけども、作家さんの顔を一回も見たことがないんですよ」という話を聞いた時にね、これはまずいな、と思ったの。やっぱり歌や音楽が好きでJASRACに入社した職員たちが一所懸命作家の代理人として色んな徴収業務にあたってるのに、肝心の作家の顔も見ずに退職するというのは作家としては申し訳ないな、という気持ちになったの。職員と直に話をしたりすることで彼らのモチベーションが少しでも上がってくれたら嬉しいし、という想いもあって、支部巡りして懇談の機会を作ろうと思って始めたわけ。  ただ、会長がわざわざその支部に行くとなると業務みたいになるし、執行権のない会長がJASRACの事務所経費で行くのは筋が通らないんで、自費でやることにした。作詞家って仕事してると取材だ、講演だ、ゴルフのお付き合いだってあっちこっち行くから、自分の出張の時にちょっと足を伸ばして支部を訪問するってやれば、全国の支部を回れるなと思って機会がある度にやってた。  使ってくれる

Vol.22 JASRAC会長(前編)

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月に一回、いではくが飲み屋さんへ行って軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする「酒と話」。今回は三鷹にある宮崎料理のお店「車」で『JASRAC会長』について語ってもらいました! 前後編に分けてお送りします。 何かと悪いイメージのあるJASRAC。 音楽教室から著作権使用料の徴収*を開始した時の会長であったこともあり、世間から多くの注目が集まった。かつて週刊文春から「コワモテ会長」のタイトルで取材を受けたこともある、元JASRAC会長(任期:2016-2022)いではくに聞く"JASRAC会長"とは? JASRAC役員  まずJASRACの役員には会長、理事長、理事たちがいて、それが運営の基本組織なんだけども、会長は非常勤で、執行権はないから運営には直接タッチしない。だから実際には業務執行は理事長と理事で決める。つまり、会長職は対外的な顔であり、お飾り・象徴みたいな感じかな。 ということは任期中にあった音楽教室から著作権使用料徴収の開始を決定したのは会長ではないということ?  そういうことだね。理事会で決める。もちろん会長もオブザーバーとして毎回出席はしているけど、会議に直接参加はしない。自分の方から積極的に意見を言うことはない、もちろん意見を求められれば話をするけども。  理事には作詞家の代表が6人、作曲家の代表が6人、音楽出版社の代表が6社、それから学識経験者がいる。その中にはJASRAC職員から上がってきた常任理事と常務理事がいて、理事会が構成されてる。  運営の議題を提案するのは執行部側の理事なんで理事長と常務理事と常任理事だね。だから平たく言えば業務内容に精通しているJASRACの役員が議題を提案して、理事会で決まったことを理事長以下執行部が実行するって感じかな。 会長になるには  立候補してJASRACの正会員による選挙で決まる。それには個人作家も音楽出版社も投票する。会長は1期2年なんで、2年ごとに選挙して、最大で3期つまり任期は最長で6年。それ以上はできない。理事の決め方も一緒。ただし理事は最大何年までってのはない。年齢制限はあるけどね。 歴代の会長は作詞家がやったら次は作曲家、またその次は作詞家と交互になっているが、これはそうするように決められているのか?  決まってない。正会員の中からであれば音楽出版社

Vol.21 音楽出版社との著作権契約問題(後編)

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  月に一回、いではくが飲み屋さんへ行って軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする「酒と話」。このブログで特に反響が大きかった「Vol.08-09 音楽作家から見た音楽出版社の問題点」。音楽業界だけでなく、もっと広くこの問題の実情を知ってもらおうと、長年、音楽作家の権利擁護と社会的地位向上に取り組んできたFCA(日本音楽作家団体協議会)からエンドウ. 常任理事をお迎えして最近の著作権契約に対する活動を説明してもらいつつ、”今”の音楽出版社との著作権契約問題について語り合うスペシャル対談を企画しました! 「 FCAアンケートの実施(前編) 」、「 著作権契約内容(中編) 」と続いて、いよいよ最終回「これから 〜音楽作家が理想とする音楽出版社とのパートナーシップの構築〜」です!! これから 〜音楽作家が理想とする音楽出版社とのパートナーシップの構築〜 エンドウ.常任理事(以下、エンドウ.)  FCAでも考えているんですけど、音楽出版社(以下、出版社)と対話していくにあたって、何か旗印を掲げなければならないとなった時に、シンプルにまずは「対等な関係」でなければおかしいでしょう、と。一方的に送りつけられて、契約しないんだったら干すよ、みたいなのはおかしい。  それから「自由度のある契約」のある契約ですよね。要は幅広い選択肢と柔軟性です。(出版社の印税の)取り分が50%か33%かの2択だけなんておかしいし、例えば5%、10%でやってくれる出版社が当然出てくるべきですから。  3つ目に「透明性の確保」ですけど、作品管理の状況、利用開発してるかどうかについて出版社から作家への説明が尽くされているかですよね。我々、作家が把握できて、利用開発してないんだったら文句を言って、こういう利用開発をしてください、という協議があって、(出版社側から)「では、こういう方法はどうでしょう?」という提案があって、みたいなやり取りがあって、ようやくちゃんとした契約関係になりますから。  最後に「国際標準」ですよね。こないだ(FCAの)著作権対策委員会で、国際標準の契約内容はもちろん、国際標準より先の「未来標準」っていう理想を求めていきたいという話になりました。日本がリーダーシップをとって、もっとクリエーターにとって良い契約っていうのはコレなんだよって世界にアピールできたら

Vol.20 音楽出版社との著作権契約問題(中編)

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  月に一回、いではくが飲み屋さんへ行って軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする「酒と話」。このブログで特に反響が大きかった「Vol.08-09 音楽作家から見た音楽出版社の問題点」。音楽業界だけでなく、もっと広くこの問題の実情を知ってもらおうと、長年、音楽作家の権利擁護と社会的地位向上に取り組んできたFCA(日本音楽作家団体協議会)からエンドウ. 常任理事をお迎えして最近の著作権契約に対する活動を説明してもらいつつ、”今”の音楽出版社との著作権契約問題について語り合うスペシャル対談を企画しました! 「 FCAアンケートの実施(前編) 」に続いて、今回は中編「著作権契約内容」です!お楽しみください!! 著作権契約内容 「標準契約書(著作権契約書FCA・MPAフォーム)」 音楽作家と作品プロモートの役割を担う音楽出版社との著作権契約として、FCAと音楽出版社協会(MPA)が共同して制作した譲渡契約書のひな形。 1988年バージョンと2001年バージョンがある。 2001年バージョンは、2001年10月の著作権等管理事業法の施行にあたり同法下の音楽出版社の位置づけを明確にするという目的で、文化庁が仲立ちしてFCAとMPAが協議して2001年3月に完成。1988年バージョンとMPAが独自に作成していた著作権契約書のひな形(MPAフォーム)を元に、これらを見直して作成された。 以降、種々の法律の制定やJASRACの管理委託契約約款の変更に対応して都度、改訂を重ねている。 エンドウ . 常任理事 ( 以下、エンドウ .)  契約書の1条と 14 条に"利用開発"という文言がある。まず契約書の1条に契約の目的が定められていて、この契約は利用開発するためのものである、と書かれています。これ、昔は違ったらしいんですよね。 2000 年以前の MPA フォーム * は、契約の目的に「利用開発」という言葉さえ入ってない。つまり「譲渡するだけ」の契約書だったんです。ですので、僕はこの標準契約書に文句いっぱいありますけど、この契約書ができなかったらもっとひどい状態だった訳ですよね。  少し話が逸れましたけど、1条、まずこの契約は「利用開発を目的としたものである」と。で、 14 条に「最大限利用開発の努力をする」という文言がしっかり明記してある