Vol.22 JASRAC会長(前編)
何かと悪いイメージのあるJASRAC。
音楽教室から著作権使用料の徴収*を開始した時の会長であったこともあり、世間から多くの注目が集まった。かつて週刊文春から「コワモテ会長」のタイトルで取材を受けたこともある、元JASRAC会長(任期:2016-2022)いではくに聞く"JASRAC会長"とは?
そういうことだね。理事会で決める。もちろん会長もオブザーバーとして毎回出席はしているけど、会議に直接参加はしない。自分の方から積極的に意見を言うことはない、もちろん意見を求められれば話をするけども。
理事には作詞家の代表が6人、作曲家の代表が6人、音楽出版社の代表が6社、それから学識経験者がいる。その中にはJASRAC職員から上がってきた常任理事と常務理事がいて、理事会が構成されてる。
運営の議題を提案するのは執行部側の理事なんで理事長と常務理事と常任理事だね。だから平たく言えば業務内容に精通しているJASRACの役員が議題を提案して、理事会で決まったことを理事長以下執行部が実行するって感じかな。
歴代の会長は作詞家がやったら次は作曲家、またその次は作詞家と交互になっているが、これはそうするように決められているのか?
決まってない。正会員の中からであれば音楽出版社の代表が会長になっても良いんだけど、ただJASRACが外国から評価されていることの一つに会長をクリエーターがやっているというのがあるんで、まぁ作詞家か作曲家がやってるってのはある。
歴代会長は作詞家と作曲家が交互になってきたんだけど、たまたま俺の前は船村会長*、都倉会長*と作曲家が2回続いた。だから次はどうしても作詞家から会長を選びたいという作家側の空気があったらしい。
そんなこともあって、作詞家の中で著作権に理解があって会長にふさわしい人物は誰だ、というのが前任者の中であったんだと思う。それで選挙の前の年の暮れに都倉会長(当時)に呼ばれて、いでさんどうかね?という話をもらった。俺は当時そんな考えは全くなかったんだけど、翌年の1月には立候補の意思表明をしないと選挙に間に合わないという状況だったんで、なるべく早く決断をして欲しいということだった。
それで1月になって、他に誰も候補者がいないのであれば立候補しても良いですよ、という返事をした。最初に打診された時は「何でオレ?」という思いはあったけど、それが業界の総意であれば受けますよ、と。
結局、選挙と言っても自分が所属する作詞家協会、そのパートナーである作曲家協会、作編曲家協会、それから音楽出版社協会が、「いではくを会長に」という事でみんなの足並みが揃わないと会長になってもギクシャクするし、そこの合意が取れるんであれば出てもいいかという感じだった。結果的に他に立候補者がいなかったから選挙なしで当選者が決まったんだけどね。だから本音を言えば、なりたくてなったというよりは押し出されてなったというね。それから自分が会長をやることで音楽業界への恩返しになるような仕事ができるんだったら、という気持ちもあった。
あとCISAC*の総会やAPMAなど*海外での会議やなんかは理事長が行くんだけど、時にはクリエーターの意見を聞かせて欲しい、という要求がある場合には(JASRAC)会長というよりクリエーター代表として出席したり、というので任期の6年間で数カ国には行った。
音楽教室との訴訟関係で裁判所に証人として出廷した時も、やっぱりクリエーターとしてどういう風に考えるかという事で出てる。クリエーター代表としてね。
会長職は名誉職とまでは言わないけど、それに近い感じだから、高額な報酬は出てない。もちろん常勤でもないわけだし。世間的にはえらい高い給料が出てるイメージかもしれないけど、実際にはそれほどの報酬ではない。これについてはオレのTwitter(現X)に書いた*。
理事長とか常勤役員は一般の会社並みの給料は出てるけど、会長や作家理事など非常勤は大した報酬ではない。だからお金のために引き受けてるんじゃなくて、やっぱり音楽業界に貢献しようという気持ちの方が強い。そこが一般の会社と違うところかな。
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