Vol. 34 街角
月に一回、飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の11曲目です!
“ 作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作詞家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかその自分が気に入っている歌だけを集めた盤を世に出したいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 ”
街角 歌:呉小芸(ウー・ショウイン) 作曲:遠藤実 1989年 / CBS SONY
「街角」は俺にしては珍しく女性をテーマにした歌。歌い手は中国の上海出身の呉小芸(ウー・ショウイン)さん。彼女はキレイだし良い子だったんだけど、大手プロダクションの所属でもなかったし、日本でヒット曲を出すことは難しかった。ただ良い歌なんでもう一度どこかで復活させたいなと思って、今回ピックアップした。
「すきま風*」とか「夢追い酒*」を担当したソニーの名物ディレクター成瀬さんから声がかかって作られた歌。ソニーもまだCBSソニーっていう名前で勢いのあった時代。この歌は演歌・歌謡曲では珍しくメロディーが先*にあって、それに詞をつけるスタイルだった。作曲は遠藤(実)先生でワルツの曲。4分の3(拍子)に4行詞でやってほしいと言われた。4行詞ってのは歌謡曲の典型的な基本パターンなんだけど、今ではほとんど耳にしないどころか、当時(1989年)でもすでにあまりやらない手法になっていた。
(遠藤)先生が作った哀愁のあるメロディーを聴いた時、季節感のある別れ歌にしようと思って(歌詞を)書いた。シャンソンに「枯葉*」という歌があるけど、それを彷彿させる歌というか、まぁ詞もメロディーも全然シャンソンと関係ないんだけど、季節の寂寥感や別れの寂しさをオーバーラップさせて作った歌で、ちょっとおしゃれに仕上がったなと自分では気に入っているね。
今回はこれまで。いかがだったでしょうか?
第35回は『蒲公英(たんぽぽ)』(水元亜紀)、1/15リリースです。お楽しみに!
すきま風 歌:杉良太郎 作曲:遠藤実 編曲:京建輔
夢追い酒 歌:渥美二郎 作詞:星野栄一 編曲:只野通泰
メロディーが先 演歌・歌謡曲では通常「歌詞」が先に作られる
枯葉 シャンソンの代表的な楽曲の一つ。仏題:Les feuilles mortes
いではく プロフィール
作詞家。1941年、長野県南牧村生まれ。早稲田大学商学部卒。
主な作品:「北国の春」(千昌夫)/「すきま風」(杉良太郎)/「早春情歌」(小林旭)/「さっそく振込みありがとう」(順弘子)/「昭和流れ歌」(森進一)など。
JASRAC第16代会長(任期:2016〜2022年)
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今月のお店:吉祥菜館