Vol. 39 代々おくり
月に一回、飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の最後の16曲目です!
“ 作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作詞家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかその自分が気に入っている歌だけを集めた盤を世に出したいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 ”
代々おくり 作曲:大谷明裕 2014年 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ
原則としてプライベート盤というか俺は個人向けのCD制作の作詞はやらないんだけど、色々付き合いやらなんやらで、どうしてもということで引き受けた歌がいくつかあって、その一つが今回話す「代々おくり」。
依頼をしたのは新潟県の長岡市にある建築会社の社長で、俺がまだ作詞家と遠藤先生*のマネージメントの二足の草鞋でやってた時代から長い付き合いをしていた。その彼に10数年前、自分が歌える歌を作ってほしいと言われて作ることになった。
余談だけど、彼は無類の競馬好きで、毎年夏になると新潟競馬場の来賓室に招待してもらって、一緒に競馬をやっていた。
歌のテーマを決める時に、彼の会社について考えた。そこは檜を使った高級住宅を専門に作る会社で、自分が住んで終わりじゃなくて、息子、孫の代まで住める家というのがコンセプトだった。それって住居という意味の「家」だけじゃなくて、家族、そこに住む人も含めて自分の代、また息子や娘、そして孫と代々続いていく、世代を繋いでいくという歌が今の時代必要なんじゃないかと思って歌詞を書いた。
曲は大谷明裕*さんが付けてくれて、あまり演歌演歌していない、程よい歌謡曲というスタイルに仕上がった。歌い手さんがあくまでアマチュアの人なんで、そんなにこねくり回した難しい歌を作っても歌いこなせないから、手頃で誰でも口ずさめる良いメロディーになってる。だからカラオケで歌っても気持ちいいし、ミドルテンポの曲だから歌詞もしっかり伝わるんで、もっと広く知ってもらいたいし、残っていってほしい歌。
日本も少子化という社会問題を抱えてる中、家を繋いでいくことは社会的・文化的に見ても大切なことだと思ってる。家とか家族っていうのは人間生活の中でももっとも重要なことの一つ。親の教えとか料理の味とかでその家その家の家風というものが作られていくし、それをずっと繋いでいってほしいと願って書いた歌。是非一度聴いてもらいたい。
シリーズ『自分の中のヒット曲たち』、いかがだったでしょう?
そしてこのブログ「酒と話」も次回がついにラストです!6/15(日)リリースです。お楽しみに!!
遠藤先生 遠藤実。日本を代表する作曲家。2009年、国民栄誉賞を受賞。
大谷明裕 作曲家・シンガーソングライター。「満天の瞳(ほし)」(歌:氷川きよし)「ありがとう…感謝」(歌:小金沢昇司) など多数
いではく プロフィール
作詞家。1941年、長野県南牧村生まれ。早稲田大学商学部卒。
主な作品:「北国の春」(千昌夫)/「すきま風」(杉良太郎)/「早春情歌」(小林旭)/「さっそく振込みありがとう」(順弘子)/「昭和流れ歌」(森進一)など。
JASRAC第16代会長(任期:2016〜2022年)
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今月のお店:福寿