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Vol.27 早春情歌

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  月に一回、いではくが飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の4曲目です!! "作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作者として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかはそういう自分が気に入っている歌だけを集めて、例えばLP盤など形にして、もう一度世に問いたいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 " 早春情歌 歌:小林旭 作曲:遠藤実 1988年 / ユニバーサルミュージック  この歌を作った経緯っていうのは、星野哲郎*さんが音頭を取ってユニバーサル(ミュージック)に 移籍する(小林)旭*さんのために作詞作曲家が6組で、ひと組2曲、計12曲を作ってLPを出そう、という企画から始まったと記憶している。  で、俺は当然師匠の遠藤(実)*先生とコンビで作ることになった。当時、遠藤先生は自分で作詞作曲をして、旭さんの歌「ついて来るかい」*や「ごめんね」*等をすでに出していたんで、俺はそういった「男女もの」以外で書くことにした。  旭さんは俺が高校生の時から映画で観ていた人。要するに青春時代の銀幕の大スター。その人の歌を書けるってんで気合いが入っていたけど、さっきも言ったように師匠と同じ路線ではダメだし、じゃあ何を書くかってなった時に思い浮かんだのが、旭さん主演の「渡り鳥シリーズ*」。このシリーズは旭さんのイメージと自分の思いが合致した為、旅情歌が良いんじゃないかと思ったわけね。ただ、舞台をどこにするか考えた時に、やっぱりそこに郷土意識が頭をよぎり(笑)、信州を舞台にしたいなと思った。  旭さんといえばお馴染みのトレンチコート姿を連想した時にパッと出てきたのが、自分がよく知っている千曲川や信濃川。ただ、千曲川*は五木ひろしさんが歌ってヒットしていたんで、 千曲川よりももうちょっと下流の信濃川にしようと思ったんだけど、実際には自分がよく知っている千曲川流域の小諸とか上田の城下町の風景を盛り込んでプランを組み立てていった。イメージはトレンチコートなんで、まだ寒い春先の信州ということで"早春"。そんな風にして「早春情歌」の歌詞は出来上がったわけなんだけど、それに遠藤先生が良い

Vol.26 武蔵野物語

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月に一回、いではくが飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の3曲目です!! "作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかはそういう自分が気に入っている歌だけを集めて、例えばLP盤など形にして、もう一度世に問いたいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 " 武蔵野物語 作曲:大谷明裕 2007年 / 未発表曲  今から約25年くらい前になるのかな?自分の作詞生活35周年記念でパーティーをやった時に、自分が書きたいと思った好きな詞をいくつか作り上げて、それを何人かの作曲家に曲をつけてもらったものをCDにしてパーティーの参加者にお土産の一つとして配ったの。そのCDに入っていた「置き手紙」 * とかは、ディレクターの目に留まって堀内孝雄さんや藤本美貴さんの新曲としてリリースされたんだけど、まだ未発表曲として残っている曲もあって、その中で自分がどうしても世に問いたいなと思っているのが、今回話をする「武蔵野物語」。  俺は基本的にオーダーを受けて詞を書くというスタイル。「北国の春」*や「すきま風」*といった望郷歌や人生歌で売れたこともあって、恋愛物のオーダーというのがほとんどなかった。ただ、さっき話した記念CDは自由に書くという企画だったから、女性に、できればある程度の人生経験をもった女性歌手に歌ってもらうことを想定した恋愛物にチャレンジしようと思って書いた。  詞の世界観は、作詞生活を始めたばっかりの頃に住んでいた(杉並区)久我山の風景がベースになってる。あの辺はまだ武蔵野台地というか、そういう感じで周りにも雑木林の風景が残っている時代だったんで、そのことを思い出しながら、冬木立の雑木林の中で男女の別れがあって、というような舞台設定・ストーリー立てにした。冬木立の中で別れるという物悲しさ、それから別れではあるんだけど、憎み合って別れるんじゃない、相手の男の人に「これからはちゃんと一人で何でもやっていってね」という女性の持つ優しさが入っている詞。その辺がちょっとシャンソンぽいというか、言ってみれば和風シャンソンみたいな感じの歌で、オシャレな感じになっ

再掲:音楽出版社との著作権契約問題(一気読みバージョン)

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  2023年9月にリリースされたスペシャル対談「音楽出版社との著作権契約問題」。 FCA(日本音楽作家団体協議会)エンドウ. 常任理事との対談は大きな反響を呼び、今でもこのブログの人気投稿として高い閲覧数をキープしている。1 0,000字を超えるロングインタビューだったため 3回に分けて発表したが、まとめて読みたい!との声を多数いただいたので、リリースから半年経った今、改めて「一気読みバージョン」として再掲することにしました。 長年、著作権契約に問題意識を持ち続けている2人の熱い話を"一気"にお楽しみください!! 01:FCAアンケート「音楽作家の実態・意識把握調査」実施について エンドウ .  常任理事 ( 以下、エンドウ .)    まずアンケート実施までの経緯から説明しますと、数年前、僕は一度参議院会館に行ったことがあるんですよ。友人に「政策の兼ね合いで政策秘書さんと会うんで、エンドウ . さんも何か議員さんに言いたいことはありますか?」と声をかけてもらったんです。そこでクリエーター界隈の活動に重きを置いている議員さんや政策秘書さん、公正取引委員会の方に「音楽出版社 ( 以下、出版社 ) の問題を解消するにはどうしたら良いですか」と相談したところ、「数が必要だよ」という回答をいただきました。団体でやらなきゃダメだし、何か ( 客観的な ) 資料がないとダメだ、と。「じゃあアンケートかな」と思ったんですね。  本音を言うと当時「 FCA は何もやってないのではないか」というお言葉を皆様からいただいていて、何かやろう、というのはずっとあったので。アンケートから浮かび上がった問題なら ( 資料として ) どこかに出しやすいのかなぁと思って実施したのが FCA アンケート「音楽作家の実態・意識把握調査」 * 1 です。 2021 年秋に第1回目を行い、 2023 年1月に第2回を実施しました。   FCA に加盟している団体はどこも高齢化が進んでいるんですが、やはり若い音楽作家 ( 以下、作家 ) の意見も聞きたいということで正会員団体に所属していない方々にもご参加いただくために、 ( 紙以外に ) オンラインで回答できるアンケートにしました。  その調査結果を報告書にまとめた他、報告書の概要を解説動画も作成して YouTube で公