Vol.03 音楽賞


 
月に一回、いではくのお気に入りの飲み屋さんへ行って、軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする「酒と話」。第3回は飲み屋さんではなく、いではくがメンバー会員の「相模湖カントリークラブ」で『音楽賞』について聞きました!


 『北国の春』に『すきま風』とミリオンセラーを出したにも関わらず、実は音楽賞にはほとんど縁がなかった。その理由は売れ方にあった!?

賞に縁がなかった理由

 (日本)レコード大賞、(日本)作詞大賞、(日本)歌謡大賞とか音楽業界には色んな賞が今よりも昔はもっとあったんだけど、賞はほどんど取ってないんだよね。
 俺の作品は瞬発力でバッと大きく売れるっていうよりは、長い時間をかけてずっと売れ続ける作品が多いの。最近だと『谺-こだま*』は発売から1年以上たってもカラオケファン*のカラオケリクエストHOT50の中に入り続けてるし。
 でも、毎年毎年ある賞ってのは年度賞なんで、その年度の中で活躍したとか売れた歌に賞が贈られる。だからじっくり長く売れ続ける歌は目立った売れ方をしないから、なかなか賞の対象にはならないんだよね。『北国の春*』も『すきま風*』もミリオンセラーにはなってるんだけど、1年で一気に売れた歌じゃないから、さっき言ったような賞は取ってない。まぁ、作品が売れてくれて多くの人に愛されればいいという思いがあるから、賞に縁がなかったことに不満があるわけではないんだけど(笑)。
 だからもらった賞と言えばロングセラー賞くらいかな?『すきま風』がオリコンチャートの100位内に155週、『北国の春』が148週とチャートインの最長記録1位と2位だった*ことはちょっと自慢かな。


お昼は長崎ちゃんぽんと揚げ餃子


「北国の春」と「すきま風」

 1977年4月に『北国の春』が発売されたんだけど実際に売れ始めたのは次の年の秋くらいだから1年以上たってから上昇していった。
 『すきま風』も1976年10月に発売されて、次の時の'77年10月から再放送*になって、徐々に売れ出した。だからこれも1年たってから売れ出した。
 最初はヒットチャート50位〜100位からスタートして、その期間が長かったから、その時はまさかミリオンセラーになるとは思わなかったんだけど、徐々に徐々に上がっていってベスト10に入ってくるような作品になった。最終的に『北国の春』が300万枚、『すきま風』が100万枚売れたんだけど、どっちもオリコンチャートで1位になったことはないし、賞にも縁がなかったっていうんだから面白いよね。


鹿児島県産赤鶏さつま炭火焼(税込¥760)


息の長い歌

 長く売れ続けるのは、プロモーションというよりも歌が持っている力、なのかもしれない。ゆっくり世間に浸透していって、時間がかかっても大きく売れる作品の方が後々まで残るんじゃないかと思うんだよね。瞬発力があってパッと売れる歌もいいんだけども、やっぱり早く売れて早く忘れられるのは寂しいよね、作家としては。
 140週間というと約3年近くチャートインしているわけで、そうすると歌が時代と併せて語られることもあるかもしれない。例えば、Uターン現象。1979年は初めて東京に入ってくる人よりも東京から地方へ流出していった数が上回った年。望郷を歌った『北国の春』の売上のピークも同じ1979年だったのは偶然じゃないと思う。"歌は世につれ、世は歌につれ"とはよく言うけど、もしかすると"世の中が歌(北国の春)につれた"のかもしれないね。


トマトキムチ(税込¥690)


今回はこれまで。いかがだったでしょうか?第4回(4/15リリース)のテーマは『JASRACについて』です。お楽しみに!


谺-こだま* 歌:三山ひろし 作曲:四方章人 編曲:伊戸のりお 購入サイト: クラウンミュージックショップ
カラオケファン* (株)ミューズから出版されている音楽情報誌 HP: https://www.muse-s.co.jp
すきま風* 歌:杉良太郎 作曲:遠藤実 編曲:京建輔
北国の春* 歌:千昌夫 作曲:遠藤実 編曲:京建輔
1位と2位だった* 2003年に「地上の星」(中島みゆき)に抜かれる
再放送* テレビ朝日の時代劇「遠山の金さん」のエンディングテーマだった

【いではく プロフィール】
作詞家。1941年、長野県南牧村生まれ。早稲田大学商学部卒。
主な作品:「北国の春」(千昌夫)「すきま風」(杉良太郎)「早春情歌」(小林旭)「さっそく振込みありがとう」(順弘子)「昭和流れ歌」(森進一)など。
JASRAC第16代会長(任期:2016〜2022年)

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相模湖カントリークラブ


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