Vol.04 JASRAC

 


月に一回、いではくのお気に入りの飲み屋さんへ行って、軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする「酒と話」。第4回は、吉祥寺にある「Osteria Bar the Passion」のテイクアウトメニューを自宅で食べながら『JASRAC』について聞きました!
*このインタビューはJASRAC会長退任後に行われました。あくまで一作家、一会員の発言であり、JASRACを代表したものではありません。


JASRACとは?

 作詞・作曲家、音楽出版社、この三者は言ってみれば作品の権利者なわけ。例えば "A"という歌を作った権利者が「この歌の著作権料を自分たちの代わりに徴収してください」とJASRACに信託する、そうするとJASRACが著作権料を徴収してきて、自分のとこの手数料を引いて、権利者に分配する。簡単に言うとそれがJASRACの仕事。だから手数料で成り立ってる団体ってわけ。
 ホームページで収支を公表*してるから正確な数字は、そこで見てほしいんだけど、年間の徴収額はだいたい1,200億円くらいで、その9割弱が権利者に分配されてる。だからJASRACの手数料は1割ちょっとってとこじゃないかな。

 つまりJASRACに信託してない作品がいくら売れようが、JASRACは著作権料を徴収しない。これはJASRACを理解するのに大事なポイント。


前菜の盛り合わせ(1,680円/1人前) 写真は2人前


なぜ世間のJASRACに対するイメージが良くないのか?

 やっぱり、それは著作権料を(JASRACに)"取られる"というイメージがあるからだろうね。取られるんじゃなくて、普通だったら人様が作ったものを使うんだから、利用する側が自発的に納めてくれれば、そういうイメージもなくなるんだけど、あわよくば音楽をタダで使おうと思う人たちがいて、そういう人たちは"取られた"ってことになる。そういう意識があるうちは、JASRACは悪者になり続けなればならない。でも、人が一生懸命作ったものを利用してんのに、作った人たちに一銭も払いたくない、ってのは本当に文化国家って言えんのかね。


山形県産 金華豚のロースト ¥2,980


口笛吹いてもJASRACが徴収しにくる、なんて言われたりもするが...

 あ、そうなんだ(笑)。
 真面目に答えると、まず前提としてその曲がJASRACの管理楽曲か、さっきも言ったけどJASRACは信託された楽曲の著作権料しか徴収しないから。その次に、その演奏は営利に結びついているのか。つまり演奏をしたからJASRACが徴収にくるわけじゃなくて、極端なことを言えば、その口笛でお金を儲けてるなら、著作権料をください、と。だからプライベートで好きに歌ってる分にはいいんですよ。こういうところがものすごい誤解されている。
 口笛吹いたり、鼻歌歌っただけでJASRACが徴収に来るなら、みんな一度はJASRACの職員さんに会ってるし著作権料を支払ってるはずでしょ(笑)。




作家にとってなぜJASRACが必要なのか?

 作家の立場から言えば、自分の作った歌を使って営業しているところに自ら著作権料を徴収できれば、何も手数料を取るJASRACに信託する必要はない。でもそんなことは不可能でしょ。例えば俺が全国津々浦々「北国の春*」の著作権料をもらいに汽車賃や宿泊費を使って行けないわけだから。
 つまりJASRACは僕ら作家の代理人として著作権料をもらってる、で、繰り返しになるけど手数料を引いて、僕らに払ってくれてる。それなのにJASRACの文句をいう作家がいるのよ。こういうこと言うと炎上するんだろうけど、JASRACに不満があるなら、信託しないで自分で徴収すればいいんだよ。
 至らないところもあるかもしれないけど、俺からすればJASRACは一生懸命作家のためにやってくれてると思うよ。


今回はこれまで。いかがだったでしょうか?
第5回(5/15リリース)のテーマは『マイ・ベスト・詩』です。お楽しみに!

北国の春* 歌:千昌夫 作曲:遠藤実 編曲:京建輔 https://www.youtube.com/watch?v=Zqxvhs-9KVY

【いではく プロフィール】
作詞家。1941年、長野県南牧村生まれ。早稲田大学商学部卒。
主な作品:「北国の春」(千昌夫)「すきま風」(杉良太郎)「早春情歌」(小林旭)「さっそく振込みありがとう」(順弘子)「昭和流れ歌」(森進一)など。
JASRAC第16代会長(任期:2016〜2022年)

All Rights Reserved. Text & Images @ Godrillhas Production

今月のお店:Osteria Bar the Passion



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