Vol.24 愛しき島よ


月に一回、いではくが飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。第24回から新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』をお送りします。お店は阿佐ヶ谷の町中華「日昇園」で昼飲みです!

"作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかはそういう自分が気に入っている歌だけを集めて、例えばLP盤など形にして、もう一度世に問いたいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 "

愛しき島よ 歌:ミヤギマモル 2005年 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ


 とりあえず一番先にパッと頭に思い浮かんだのは「愛しき島よ」。沖縄の石垣島に住んでいるシンガーソングライターのミヤギマモル*さんと一緒に作った歌で、この歌は本当にもう一回リリースできると良いなぁと思ってる。

 この歌の何が気に入っているかというと、普段の歌作りでは主人公とかテーマになる個人がいて詞を書くんだけど、これは沖縄に住む人々、つまり不特定多数の島人(しまんちゅ)の大らかさや沖縄の島自体が持っている雰囲気とかを書いた歌で、まぁ自画自賛ではないけども、それよく伝えられていると思っている。こういう何ていうか、自分でも忘れられない良い歌を書いたなぁという感触が今でもある。

 それから、俺はディレクターから「〇〇というテーマで」という感じでオーダーを受けてから歌を書く、受注生産タイプ。芸術家というより職人タイプなんだけど、この歌は毎年沖縄に行って、あっちこっち行ったり見たりして、島の人たちと触れ合って感じた事を自由に書いた、自分としては珍しい歌でもあるんだよね。



 2005年、縁があって沖縄で開催されるボリビアのチャリティーゴルフに俺も参加した時に、当時オリオンビールの社長をしていた嘉手苅さんという方が、せっかくだから「シンガーソングライターで『八重山(やいま)』*という歌を作ったミヤギマモルを紹介しますわ」と言って、彼を紹介してくれた。それが彼との最初の出会い。

 そこから2人の交流が始まって、まぁ色んな歌をいくつか作ったんだけど、そのうちの1つが、この「愛しき島よ」だったの。それを徳間ジャパンに売り込んでリリースしたんだけど、全国展開することがなかったんで、色々な場所で聴かれる機会が少なかったのは残念だよね。だからこそ尚のこと、もう一度!という気持ちが強い。



今回はこれまで。いかがだったでしょうか?
第25回は『欅伝説 (歌:さとう宗幸) 』を2月15日にリリースします。お楽しみに!

*ミヤギマモル:代表提供曲 「琉球ムーン」国仲涼子 /「愛のチカラ」夏川りみ /「泡盛心中」上沼恵美子
*八重山(やいま) 歌:千昌夫 作詞・作曲:宮城衞

【いではく プロフィール】
作詞家。1941年、長野県南牧村生まれ。早稲田大学商学部卒。
主な作品:「北国の春」(千昌夫)「すきま風」(杉良太郎)「早春情歌」(小林旭)「さっそく振込みありがとう」(順弘子)「昭和流れ歌」(森進一)など。
JASRAC第16代会長(任期:2016〜2022年)

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今月のお店:日昇園


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