Vol.26 武蔵野物語

月に一回、いではくが飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の3曲目です!! "作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかはそういう自分が気に入っている歌だけを集めて、例えばLP盤など形にして、もう一度世に問いたいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 " 武蔵野物語 作曲:大谷明裕 2007年 / 未発表曲 今から約25年くらい前になるのかな?自分の作詞生活35周年記念でパーティーをやった時に、自分が書きたいと思った好きな詞をいくつか作り上げて、それを何人かの作曲家に曲をつけてもらったものをCDにしてパーティーの参加者にお土産の一つとして配ったの。そのCDに入っていた「置き手紙」 * とかは、ディレクターの目に留まって堀内孝雄さんや藤本美貴さんの新曲としてリリースされたんだけど、まだ未発表曲として残っている曲もあって、その中で自分がどうしても世に問いたいなと思っているのが、今回話をする「武蔵野物語」。 俺は基本的にオーダーを受けて詞を書くというスタイル。「北国の春」*や「すきま風」*といった望郷歌や人生歌で売れたこともあって、恋愛物のオーダーというのがほとんどなかった。ただ、さっき話した記念CDは自由に書くという企画だったから、女性に、できればある程度の人生経験をもった女性歌手に歌ってもらうことを想定した恋愛物にチャレンジしようと思って書いた。 詞の世界観は、作詞生活を始めたばっかりの頃に住んでいた(杉並区)久我山の風景がベースになってる。あの辺はまだ武蔵野台地というか、そういう感じで周りにも雑木林の風景が残っている時代だったんで、そのことを思い出しながら、冬木立の雑木林の中で男女の別れがあって、というような舞台設定・ストーリー立てにした。冬木立の中で別れるという物悲しさ、それから別れではあるんだけど、憎み合って別れるんじゃない、相手の男の人に「これからはちゃんと一人で何でもやっていってね」という女性の持つ優しさが入っている詞。その辺がちょっとシャンソンぽいというか、言ってみれば和風シャンソンみたいな感じの歌で、オシャレな感じになっ...