Vol. 35 蒲公英
月に一回、飲み屋さんで軽く酒とつまみをやりながらテーマに沿った話をする 「酒と話」。新シリーズ『自分の中のヒット曲たち』の12曲目です! “ 作詞生活50数年。600曲以上を作ってきた中で、売れなかった曲の方が圧倒的に多い。だけど、(売れなくても)作詞家として「良い歌が書けた」と思う歌がたくさんある。いつかその自分が気に入っている歌だけを集めた盤を世に出したいと思ってる。それが俺の作詞家としての集大成 ” 蒲公英 歌:水元亜紀 作曲:杉本眞人 2011年 / 徳間ジャパンコミュニケーションズ この歌を作ることになったきっかけは万代宏 * くん。彼とはミノルフォン * からデビューした時以来の付き合いで、歌い手をやめてキム・ヨンジャさんのマネージャーになった時に「ヨンジャさんの歌を書いてみてくれませんか?」と言われた。 詞を書く前にまず思ったのは、キム・ヨンジャ * さんは韓国の人だから、日本で活動すると言葉や習慣の問題など色々苦労も多いだろうな、と。海外で活動するということに限らず、自分が生まれ育った場所から全然違う環境へ行って生活していく人って沢山いるし、そういう人たちへ向けたメッセージがある歌が良いかなと思って、この歌詞を書いた。 なぜ蒲公英をモチーフにしたかというと、タンポポっていうのは根っこが深くて、そこの土地に定着するとそこで結構丈夫に育つ植物だから。根をしっかり下ろして、そこで花を咲かせる、咲き終わって綿毛になると風に吹かれて、また色々な場所へ行き、そこでまた根を張って、育つ … という「たくましさ」をタンポポは持っている。それに例えて、人間も見知らぬ土地へ行っても、そこでしっかり生活基盤の根を下ろして、生活をして … という「力強さ」を歌にした。今は時代も変わったけど、昔は結婚して自分の知らない土地で暮らす女性が多かったしね。 結局この歌はヨンジャさんに歌ってもらうことにはならなかったんだけど、良い歌だしもったいないからということで水元亜紀さんが歌ってくれた。それはそれですごくありがたい事なんだけど、元々はヨンジャさんをイメージして書いた歌なんで、いつかこの作品の根底にある「遠く離れた土地で活動している」経験のある人にも歌ってほしいなという気持ちがあるんだよね。...